原因: |
インフルエンザウイルスでヒトに感染するのはAソ連型、A香港型そしてB型の3種類で、最近は新型インフルエンザも問題になっています。それぞれ別のウイルスのため、1シーズンに2回も3回もインフルエンザにかかることもありえます。さらに、インフルエンザウイルスは毎年少しずつ姿を変えるため(変異)、一度かかっても一生免疫を獲得できず、毎年かかることもあります。咳で飛んだ分泌物や痰から感染し、閉鎖空間では、患者さんがいなくなってからも感染することがあります。感染時期は発症1日前から発症後3~7日程度です。
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潜伏期間: |
1~3日間くらいです。
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症状: |
突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状で始まります。他に咳、喉の痛みなどの呼吸器症状、腹痛、嘔吐、下痢などの消火器症状などがみられることもあります。発熱は3~5日くらい続くことが多く、一度解熱しかかってから再び高熱になることもあります。一般に1週間くらいで回復します。
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合併症: |
中耳炎、肺炎、筋炎などが多く、小さい子供では熱性けいれんを起こすこともあります。また、熱せん妄といって、うなされて変なことを言ったりすることがあります。これはこのあとに述べる脳炎などとは違い、すぐに改善します。一番の問題は脳炎や脳症の合併です。頻度は非常にまれですが、毎年何十人もこの合併症で亡くなっています。けいれんが持続したり、何回も繰り返したり、意識状態がおかしいと思ったときは至急医療機関を受診してください。脳炎や脳症はインフルエンザを発症してから1~2日以内の早い時期の合併が多く、亡くなったり、後遺症を残すこともある非常に怖い合併症です。
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診断: |
鼻の奥や喉の粘膜を綿棒でぬぐって検査すると15分以内に診断がつきます。ただし、発症して数時間の早い時期では診断がつかないことも多いので、初日に陰性でも翌日の再検査で診断がつくこともあります。
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治療: |
今の治療方法は(1)タミフルという飲み薬、(2)リレンザという吸入薬、(3)漢方薬、(4)何も使わないでがんばるの4つです。(1)と(2)は直接インフルエンザウイルスに作用するので有効なことが多く、だいたい1~2日で元気になります。(3)はよく効く場合が多いのですが、あまり効かない場合もあります。それぞれの治療の問題点もあります。タミフルは味が非常にまずいのと異常行動の副作用がありえること、そのため10歳以降の子供の場合は原則として使用禁止で、10歳未満の場合は症状と家族による看護体制を考慮して検討するとなっています。リレンザは自宅で簡単にできる携帯用の吸入ですが、小さいお子さんにはむずかしい方法です。漢方は1歳前のお子さんにも投与できていいのですが、やはり味がまずいということです。解熱剤はアセトミノフェンという成分のもの(アンヒバ、カロナール、アセトアミノフェンなど)であれば一般に問題ないのですが、大人の方が使うようなものではいろいろ副作用を起こすことがあり、子供では禁止されています。抗生剤は中耳炎や肺炎の合併がある場合に有効です。
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予防: |
基本はワクチンです。他のワクチンと異なり、その有効性は高くありませんが、医療従事者、お年寄り、慢性疾患(特に呼吸器や心臓など)の患者さん、そして子供は接種したほうが安全です。妊婦の方も安定期に入れば安全といわれています。かかりつけの産科の先生に相談してみてください。接種時期はインフルエンザ流行前の10月くらいから接種します。(原則として小学生までは4週間くらいあけて2回接種、以降は1回接種です)効果は4~5ヶ月くらい持続します。従って、5月頃には効き目が弱くなっているのと、翌シーズンはまた接種が必要な点が問題です。他の予防は、手洗い、うがい、マスク着用など風邪と同じ対策が大切です。
最近は、新型インフルエンザが問題となっています。このウイルスによる大流行は間違いなく、近い将来起こりえるといわれています。現在のワクチンは無効ですが、新しいワクチンの開発も進み、治療薬も検討されています。ふだんから、インフルエンザに対する知識を得、予防を考えておくことが大切です。
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登園、登校:
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完全に解熱して2日くらいたってからにしてください。
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